- <結婚情報会社へようこそ> 本当の結婚は可能なのか?[1]
- 25年間のモートソロ経験を率直に綴ったエッセイで、紹介の経験や恋愛の失敗談をユーモアたっぷりに描写しています。1男4女の家庭の末っ子との紹介の話は圧巻です。
理想のタイプはどんな人ですか?
男女が出会うと、一番多くやり取りする質問は『理想のタイプ』ではないでしょうか?
私はこの質問がとても難しかったんです。
理想のタイプがいつも変わっていたからです。最初は、私より背が高くてきちんと感のある人が良いと思っていました。
背が高くてきちんと感のある人に出会いました。
3回目のデートで映画を見に行ったのですが、映画が始まる前に有名な航空会社のCMが流れていました。
静かにスクリーンを見つめていた彼は、小さな声でつぶやきました。
「一生、あんなファーストクラスには乗れないだろうな。」
一瞬、耳を疑いました。
普通は『乗れたらいいな』とか『いつか乗ってみよう』って考えませんか?
まあ、そういうものかなと流したのですが、彼が全体的にネガティブな人間だと気づくのにそう時間はかかりませんでした。
「あんなものは絶対買えないだろうな。」
「次の世ででもやれるかな。」
これが一度耳に入ると、ずっと気になってしまうんです。
私は感情移入しやすいので、そばにいる人がネガティブだと一緒に落ち込み、ポジティブだと一緒に気分が良くなるということを知っていました。
彼の正式に付き合おうという告白を断り、理想のタイプを修正しました。
背が高くてきちんと感があって、ポジティブな人だったら良いな、と。
晩秋だったでしょうか…3歳年上の建築系の会社員を紹介してもらうことになりました。
ハンサムではありませんでしたが、普通で、背もそこそこ高く、きちんと感があり、会話の時は笑顔が多い人でした。
楽しい時間を過ごしましたし、幸いにも彼も好意を持ってくれて、次のデートに誘ってくれました。
問題は、帰りに上着を着た時に起こりました。
そんな色の服があったのかと思うくらい、それはなんとミントグリーンのダッフルコートでした。
衝撃と恐怖のミントグリーンのダッフルコートは、家に帰る間中、私の頭の中を支配していました。
「昨日の紹介で会った人はどうだった?」
「まあまあ良かったですよ。外見も性格も普通でした。でも…」
「何か引っかかるの?」
「ええと…、ミントグリーンのダッフルコートを着ていたんです。」
「ミントグリーンのダッフルコート?男性もそんな色を着るの?」
「分かりません。私も初めて見たので。」
会社の同僚たちの一般的な反応は、男性はもともと服装が下手な場合が多く、
少しずつアドバイスしながら変えさせていけば、全く問題ないということでした。
しかし、その人は2回目、3回目のデートでも同じミントグリーンのダッフルコートを着て現れました。
これが噂に聞いていたファッションテロリストというものなのか。
みんな、些細なことにこだわりすぎだと言い、私がためらって断ろうとしているのを、神経質だと叱りました。
「宝くじを買わないと当たらない?あんな服くらい着てても別にどうだっていいじゃない。」
自分を奮い立たせようとしていました。
4回目のデート。
私が働いていた会社の近くまで迎えに来てくれたのですが、ちょうど退勤する同僚たちがその光景を目撃したようでした。
「服のことばかり言ってたから、大げさだって言ってたけど、実際に見てびっくりしたわ。」
「まさか~いくらなんでも、それって。気に入ってる女性に会うために、わざわざ東京・臨海副都心まで来るのに、服をそんな…酷すぎない? 」
彼らの反応に安心しました。
そう、私がおかしいんじゃないんだ。
背が高くてきちんと感があって、ポジティブで、ごく普通の服を着ていれば良いな。
こうして紹介を繰り返すたびに、私の理想のタイプはレベルアップしていきました。
タバコを吸う人は嫌だと言ったら、酒を大量に飲んでくるし。
酒もタバコも吸わない人が良いと言ったら、仕事しかできない人が現れるし。
趣味をちょっと楽しんでいる人だったら良いなと言ったら、『楽しむために生きてる』YOLO族が出てくるし。
お腹が空いていないので食事は大丈夫と言ったら、「パスタでも頼もうかと思って心配してたんですよ。そんなの全然ダメなんですけど。」とコメントを残して消えていく男。
しょっちゅう連絡してくるか、1日に1回「おはようございます。今日も頑張りましょう。」というメッセージが来るか。
どうして人間って、中庸がないんだろう。
「おい、一番見つけるのが難しいのは普通の人間だよ。知らなかったのか?」
親友は、私の惨めな紹介話の愚痴を聞いて、真剣に言いました。
「絶対に譲れない基準を作りなさい。こうだから嫌だ、ああだから嫌だとしたら、キリがないから。」
こうしてできた最終的な防衛線は、『私より背が高くてポジティブで、会話が上手な人』になりました。
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